家を建て替える際には、既存の建物を解体する必要があります。
解体工事は、既存の建物を壊して終わりではありません。
特に重量鉄骨造の場合には、建物本体を撤去した後に、既存の地下構造物(地下室、山留め壁、基礎杭など)も解体・撤去する必要があります。そして、新しい建物を安全・頑強に建てるために、地盤も整えなくてはなりません。
そこで今回は、こうした見えない部分の工事はどのように行われるのかをご説明します。
また、来年度から調査がさらに徹底されるアスベスト調査についても、解体工事の際に必要な基礎知識としてご説明します。
解体工事の流れのおさらい
まず、解体工事の流れをおさらいしましょう。
解体工事は次のような流れで行われます。
① 足場や養生の設置
解体工事の準備として、足場や養生を設置します。解体工事中は騒音や振動の発生、ほこりや粉塵の飛散などにより、隣近所の方々に迷惑をおかけすることになります。そのためにも養生をしっかりと施す必要があります。
② 内装の解体
建物の内装や石膏ボード、窓ガラス、サッシなどを手作業で解体・撤去します。
③ 屋根や外壁材の撤去
建物の屋根や外壁材を撤去します。事前調査によって、屋根や外壁材にアスベストが使用されていることがわかった場合には、屋根や外壁を撤去する前にアスベストの除去作業を行う必要があります。
④ 地上解体
鉄骨造の建物を切断して鉄骨を細かくバラし、解体・撤去します
⑤ 基礎の解体
地中にある基礎の部分を解体・撤去します。
⑥ 後片付けと整地
基礎の解体が終わったら、後片付けを行い、ローラーなどを使用して地面を平らにし、新しい建物を建てられる状態に仕上げます。
上記の①から⑤の流れのうち、③のアスベスト調査と、⑤の「基礎」の解体・撤去を終えた後に必要な工事について詳しくご説明します。
必須のアスベスト調査
建物を解体する際には、事前にアスベスト調査を行うことが義務付けられています。
事前調査の結果、アスベストを含んだ建材があると認められた場合には、アスベストの飛散防止対策が必要になります。
もちろん中村建設でもアスベストの調査を必ず行っていますが、解体業者の中には調査を怠ることで費用を割安にしている会社もあるので注意が必要です。
アスベストとは、天然の鉱物繊維の一種で、石綿(せきめん・いしわた)ともいわれます。極めて細い繊維から成り立ち、耐火性、耐熱性、防音性などにすぐれ、なおかつコストも安いことから、昭和30年代頃から様々な工業製品に用いられ、建材としてもよく利用されてきました。
しかし後年、肺がんや中皮腫などの発がん性が社会問題となり、現在では、原則として製造・使用等が禁止されています。そのため、アスベストを使用した建築物を解体する際に「ばく露(人体が有害な物質にさらされること)の防止」や、「一般大気環境中への飛散防止」のための対策強化が図られています。
特に、昭和31(1956)年から平成18(2006)年までに施工された建物にはアスベストが使用されている可能性があります。
また、それらの建物の解体工事が、2028年頃をピークに全国的に増加する見込みです。
そのため、本年の6月5日に、解体等工事に伴うアスベストの飛散防止対策をいっそう強化することを目的とした「大気汚染防止法の一部を改正する法律」が公布されました。
今後は、すべてのアスベスト含有建材が規制対象となり、施工業者はより適正な処理が求められます。
また、2022年4月からは工事着工前にアスベストが使われているかどうかの事前調査が必須となり、こちらの費用はお施主様が費用を負担することになります。
昭和31(1956)年から平成18(2006)年までに施工された建物の建て替えをご検討中の場合など、詳細をお知りになりたいときは当社にお気軽にご相談ください。
地盤を安定させる「土留め」処置
建物を解体する際には、解体後の地盤を安定的に保つために、「土留め(どどめ)」と呼ばれる処置が必要な場合があります。「土留め」とは、斜面や壁などに面した立地の場合、土砂崩れを防ぐために壁などを築いて土を堰き止める処置のことです。
既存の重量鉄骨造の建物を解体する際には、騒音や振動、地下水への影響などの他に、既存建物の頑強な基礎が撤去されたことで、近隣の地盤が崩れたりする場合があります。それを防ぐために、土留めの処置が行われます。
撤去する杭・残す杭
地下構造物を撤去する際、次のような場合には、杭などをそのまま残しておくことがあります。
・杭を残すことによって地盤を健全かつ安定的に維持できる
・隣地に地盤の変状などの悪影響を及ぼさないようにする
上記のような理由から撤去せず残しておく杭のことを「残杭」といいます。
残杭の対象となるのは、有害物を含まない安定した性状のものに限られます。
一方、地盤から杭を撤去した場合、その部分には穴が開いてしまうので、埋める処理が必要です。
中村建設ではこの工程において、「LSS 流動化処理工法」を採用しています。
「LSS 流動化処理工法」は、当社が独自に開発し、特許を取得した工法で、土とセメントを混ぜ、硬い土状にして杭を抜いた箇所に流し込むことで、それが固まった後に杭を撤去した後の隙間を均等に埋めることができます。
この工法によって、安定した品質を確保できると同時に、より狭い空間への充填精度を高めることが可能になりました。
環境にもやさしく、東日本大震災においては液状化対策としての効果も確認され、防災面でも期待されています。
一方、残杭のある地中に新たな基礎を築く際には、残杭を避けて新しい杭を配置するか、深さと大きさによっては残杭を新しい基礎の一部として定着させる方法を取る場合もあります。
こうした臨機応変かつ複雑な構造設計は、当社が総合建設業だからこそなし得る技といえるでしょう。
まとめ
今回ご説明した内容を次のようにまとめました。
・建物を解体する際にはアスベスト調査が義務化されていて、2022年度からはさらに調査が強化される予定です。
・重量鉄骨造を建て替える場合には、既存の建物の基礎が頑丈に築かれているため、
建物の解体・撤去の後に地中の基礎の解体・撤去も必要となります。
・近隣の土壌を安定的に保つため、必要に応じて「土留め」などの処理がなされます。
・地中の杭は、残す場合と撤去する場合があります。
・地中の杭を撤去した際にはその穴埋めを行う必要があり、当社では独自工法「LSS 流動化処理工法」を採用しています。
・杭を残す場合には、それを避けて新しい基礎を築く場合と、新しい基礎の一部に利用する場合があります。
こうした臨機応変かつ複雑な構造設計は、総合建設業だからこそなし得る技です。
このように、重量鉄骨造の解体工事を万全に行うためには、地盤の処置やアスベスト調査など、見えない部分についてもしっかり確認しておきましょう。